これまで3つのシーンで標準レンダリング、Lumen、パストレーサーの比較検証をしてきました。よりスペックの高いPCを検証に加え、レンダリング時間の測定結果をまとめます。また、Lumenに関するパラメーターの検証を行います。
前回記事:【Twinmotion】Lumenと仲良くなりたい③
レンダリング時間の比較
これまでの検証で、再構成モードによるレンダリング時間の違いはそれほど大きくないことが分かったので、[Keep hierarchy (オブジェクト階層を維持する)] でインポートしたシーンでのレンダリング時間の比較を行います。
これまで使用していたPC1(グラフィック:RTX 3060 Laptop)に加え、PC2(グラフィック:Quadro RTX 4000)も検証に加えました。※スペック詳細は後述
シーン | 使用端末 | 標準レンダリング | Lumen | パストレーサー |
外観シーン1 | PC1 | 00’26” | 09’37” | 05’01” |
〃 | PC2 | 00’17” | 04’55” | 03’06” |
外観シーン2 | PC1 | 00’21” | 07’30” | 08’33” |
〃 | PC2 | 00’15” | 04’09” | 04’58” |
内観シーン | PC1 | 00’40” | 08’29” | 24’57” |
〃 | PC2 | 00’27” | 05’33” | 14’43” |
スペックが上がれば全体的にレンダリング時間も短くなりますが、レンダリングモードによって傾向が異なることは無く、一律でPC1に比べてPC2のレンダリング時間が6割程度に短くなるという結果となりました。
Lumenのレンダリング時間は外観シーン1で長くなり、パストレーサーのレンダリング時間は内観シーンで最も長くなりました。このことから、Lumenのレンダリング時間はオブジェクト数に影響を受けやすく、パストレーサーのレンダリング時間は配置している照明の数や種類に影響を受けやすいと推測されます。発光オブジェクトが多いか少ないかということも、Lumenよりもパストレーサーの時間増の要因になりやすいと思われます。
検証に関する補足 ■ パフォーマンスの比較について、手元のストップウォッチで測っているので多少の誤差を含みます。 ■ 各レンダリングモードで、見栄えを揃えるために露出など多少の設定を変更しています。 ■ パストレーサーの品質はhighとしています。 ■ PC1のスペック・・・OS: Windows10 / CPU: Intel Core i7-10870H 2.20GHz / メモリ: 32GB / グラフィック: GeForce RTX 3060 Laptop ■ PC2のスペック・・・OS: Windows10 / CPU: Intel Core i9-9900K 3.60GHz / メモリ: 32GB / グラフィック: Quadro RTX 4000
Lumenパラメーターの検証
Lumenモードにはいくつか調整可能なパラメーターがありますが、これらによる影響を検証するために、内観シーン、使用端末:PC1で、各パラメーターを一つずつ変更してレンダリングしました。※画やレンダリング時間に影響が大きそうなパラメーターのみの実験です。
日本語表記・・・Scene detail: シーンの詳細、Ray lighting mode: 反射レイ ライティングモード、 Quality: 品質、Bounce count:バウンス数
変更箇所 | レンダリング時間 |
なし(デフォルト) | 08’29” |
出力画素数: 4K ⇒ フルHD | 03’16” |
Scene detail: 3.0 ⇒ 0.0(最小) | 08’25” |
Scene detail: 3.0 ⇒ 4.0(最大) | 08’56” |
Ray lighting mode: Full ⇒ Optimized | 07’05” |
Quality: 1.0 ⇒ 0.0(最小) | 07’11” |
Quality: 1.0 ⇒ 10.0(最大) | 24’10” |
Bounce count: 2 ⇒ 1(最小) | 08’23” |
Bounce count 2 ⇒ 8(最大) | 09’28” |
Scene Detail: 0.0(最低)と4.0(最高)の比較 ※デフォルトは3.0
値が高い方がやや明るく、光がしっかりと回り込んでいるように見えます。
Ray lighting mode: Full と Optimized の比較 ※デフォルトはFull
正直どちらの方が正しい反射なのか判断に迷う部分がありますが、Fullの方が正しいはずです。
Quality: 0.0(最低)と 10.0(最高)の比較 ※デフォルトは1.0
値が小さいと反射がややぼやけ、反射の中にもやのようなノイズが現れます。
Bounce count: 1(最低)と 8(最高)の比較 ※デフォルトは2
値が小さいと、「反射の中の反射」(ガラスに映り込んでいる金属のツヤなど)が表現されにくいです。
所感
正直、パラメーターいじってもあんまり変わらなくない?と思った人もいるかと思います。(画面が小さいと分かりづらいというのもありますが)
- Lumenの各パラメーターの値を下げても劇的にレンダリング時間が早くなるようなことは無かったし、パラメーターの値を上げても劇的に画が良くなるようなこともなかった。基本的にはパラメーターはデフォルトのままで良さそう。一応挙動は把握しておいて、必要に応じて調整できれば良いと思う。
- Lumenのレンダリング時間は、出力画素数の影響が大きかった。4KよりフルHDの方がずっと早いし、8Kではクラッシュしてしまい時間の計測ができなかった。
最後に
色々検証してだいぶLumenの挙動が分かってきました。ようやくLumenとちょっと仲良くなれたような気がします。
意外とLumenもレンダリング(エクスポート)時間がかかるので、いっそパストレーサーでもいいのでは?と感じる方もいるかもしれませんが、パストレーサーの場合は調整の操作時にビューポートで常にレンダリング更新がかかるので、操作が重くなりやすく面倒なところがあります。その点、Lumenの場合は操作時は通常レンダリングと同じように操作できるというところが非常に便利で、それだけでもパストレーサーに対して大きな優位性があると思います。
標準レンダリングに比べて鏡などの反射が綺麗に表現できるので特に内観シーンでの活躍が多そうですが、アンビエントオクルージョンの表現なども優れているため、外観シーンに対しても有効性を感じることができました。総合的に考えて、「きれいに調整する」という意味ではLumenが一番バランスよくやりやすいのかもしれないと感じました。
一方、標準レンダリングの圧倒的にレンダリング時間が短いというメリットも捨てきれず、アングル数が多くなる案件ではまだまだ標準レンダリングも活躍すると思います。それぞれのレンダリングモードが今後も更に進化していくことを期待しています!
以上.